「気がつかなかった事にしてしまおうか」


目が合った瞬間、そんな事がぱっと頭に浮かんだ。


「いや、けど、目があったし」
「大丈夫だよ。きっと向こうは気がついてないよ」



歌舞伎町入り口の黄色い看板の下で
私の心がほんの数秒、葛藤した。
向こうは明らかに気付いているのはすぐわかった。


「ひ・・・ひさしぶり」


ちょっとうわずっているのを自分でも感じる。
予想してなかったこの再会で声をかけるのは
私には勇気が必要だったのだ。


去年の初夏の新宿。
打ち合わせのためにほんのちょっと出てきただけの私は
毎度の事ながらスッピン。
そしてデニムのスカ-トにスニ-カ-だったから。



相手は大学時代の彼だった。
数年前から事情があってごくたまに連絡はとっていたが
会おうねといいつつ、実現しないまま日が過ぎていた。


別れて以来、恐ろしい程の年月が流れている。
なのに、全然変わってないどころか
お互い、一目でわかるなんて・・・。


別に嫌いになって別れたわけじゃない。
何をするにも一緒だった。
そういう意味では一生心に残して過ごすであろう人。


ちゃんと会う約束をしていたら
もう少しまともな格好を・・・
せめてお化粧位はしていたと思うのに。


神様のいぢわる。
まさにユ-ミンの『DESTINY』だよ。
そんな事を頭によぎらせつつ
「何でこんなとこにいるの~?」と
ちょっとはしゃいでみせた。



その日・・・
打ち合わせを終えた私は
信号が赤に変わりそうだったから慌てて交差点を渡りきった。



タクシ-に乗ろうとしていた彼は
信号が青になるのをまとうと交差点を渡らなかった。


信号に対するお互いの判断が
長い長い期間を経た再会につながるなんて考えもしなかった。



そして、それだけの期間会わずにいたなんて
思えない位、自然に会話が戻ってくる。
あの頃に聞けなかった事、伝えたかった事や
近況などをつきることなく話した。



「これはもう運命だな」



彼が言った。私も「そうだね」と答えた。
確かに・・・絶対、そんな気がする。



この先、また会う機会があるかはわからない。
再会の約束はしないでわかれたから。



けど、それでいいんだ。きっと。



藤代にて




何事にもいえるだろう。


必ず雪が解ける日はくる。
必ず太陽は昇る。



だから大事にしたいこと。
あきらめない・・・あわてない・・・あせらない。


そしてそんな再会があったのも私の回りにいてくれる皆との
全ての出会いのおかげ。
皆との出会いもまた運命・・・だよねっ?
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